ブリッジング強化ワークアウト (フリップ対策)

桜田ヒロキ代表の
コメント

フリップとは地声側から裏声の方にケロンと入ってしまい、本当は地声・ミックス的な音色で歌いたいが完全にファルセットになってしまうタイプです。
女性の方が声帯の構造上、どうしても裏声の方が優勢になってしまうため、女性の方が多いタイプかと思います。
特にポップス（クラシック以外の地声発声）を歌うのであれば早い段階で克服する必要があるかと思いますのでチャレンジしてみてください！

《男性編》

《女性編》

トレーニングメニュー

1. Wee Falsetto to Chest Side down

・まずはウォーミングアップ的な感じで1オクターブの範囲内で裏声から地声に降りていきましょう。
・ある程度高い音域になると地声に降りる着地の音をとても分厚い地声にすることはできなくなっていきます。この場合の分厚い地声は歌唱においてはあまり健全なところではなく、コントロールも悪く苦しくなるので1オクターブ下で止めていただき、可能であればビブラートもかけてみましょう。
・ポイントは声帯が地声的にボヨンボヨンと分厚く合わさっている状態と裏声の上の方が合わさっている状態を保っていきます。
地声に降りた時に声帯が過剰に合わさらないようにすることです。歌う時は声帯の下の方は過剰に合わさることはあまりありませんので、地声と裏声の中間なのですが基本は地声というようなところを狙っていただければと思います。

2. Nay 5tone(chest to 1st bridge down scale)

・ひっくり返りが起こりやすエリアで行っていきます。基本的にひっくり返らないように頑張ってみてください。
・男性でも女性でも低い声種の方もいらっしゃいますので、一番高いところまで行かなくても大丈夫です。少しきついかなと思う1つか2つ上までチャレンジしてみてください。
・どうしてもひっくり返ってしまう方は薄く細くペラペラ・カリカリに出すような薄っぺらい声で行ってみましょう。これによりひっくり返りはなくなると思います。慣れてきたら元の声に戻して行ってくださいね。

4. Naa 1 octave and 5th Scale

・「ア」と「エ」の間くらいを狙ってみてください。「エ」から狙い「ア」に近づけた方が上手くいく方もいらっしゃるかと思います。
・ポイントは過度に顎を動かさないようにする事です。顎を動かすことにより共鳴空間の体積が大きく変わりトーンが変わってしまったり、顎を開いていく瞬間にひっくり返ってしまう方も多いので、できるだけ舌を使って「N」を発音することを意識してみてくださいね。

5. MM 1 octave and 5th Scale(Galop scale)

・Speech Level Singing ではEdgy Hamming と呼び、古い木のドアがきしんでいるようなイメージで行っていただけると良いかと思います。
・ドアがきしんでいるような音よりも少し抜けたようなリラックスしすぎているように感じる場合は頑張って声帯を閉じるようなイメージで行ってみると良いかと思います。
・このGalop scaleのリズムは慣れていない方は少し大変かもしれません。2つくっつけ1つ切るという風に聞いてみてください。このスケールは慣れが必要な方もいらっしゃるかと思いますので、慣れるまでは動画で繰り返し練習して慣れていきましょう！

6. MM 1 octave and 5th Scale(Legato)

・先ほどのドアがきしんでいるような音を使ってレガートに行っていきます。ひっくり返ってしまう方はこちらの方が繋げていくのが難しいかもしれません。
・状態に応じてですが、慣れてきた方はだんだん息を流していくような感じでこのギュッと閉じている感じを解除してみてください。
これは声門閉鎖を強烈にするエクササイズではなく、地声と裏声のコネクションエクササイズであり、舌骨上筋群を過度に働かせないような役割があったりします。だんだん息を流していくような感じにしていくことは結構重要で、Sethも『Singing for the Stars』という本で解説しています。
最初の数週間、数ヶ月はビリビリいわせるような感じでEdgyに行っていただいて構いません。慣れてきたら歌唱で使われるような声に結び付けていきたいので、ある程度息を流していくようにEdgyを取っていきましょう。

7. Gug 1 octave and 5th Scale

・このエクササイズでは子音に「G」がついているので声門の閉鎖を一時的に高めるアシスタントをする狙いがあります。
・このエクササイズを行うときに、子供がぐずっているような「ぐずり声」で行ってみましょう。コリアンのシンガーたちがバラードでぐずっているような声で歌うようなイメージを持っていただいても良いかと思います。
・これは声帯の閉じを助けてくれる狙いもありますのでお試しください。

9. Gee 1 octave and 5th Scale

・フリップしてしまう方は裏声が優勢になりすぎてしまうため、先ほどまでのエクササイズでは地声を優勢にするため、あまり高いところまで行かないようにしていました。
・このGeeのエクササイズに関しては将来を見据えてある程度高いところまで行くので、裏声の方に移行していただいて構いません。ただしこの音から変わったというのがバレないように気をつけてみてください。いつの間にか裏声に変わったというように聞こえるよう意識してトレーニングしていくことで効果が非常に上がっていきます。

10. Nay 1 octave and 5th Scale

・これも先ほどのGeeのエクササイズと同じようにある程度高いところまで上がっていきます。これも将来的な声の開発を考えて、今まで入っていなかったような音域までタッチするようにしています。
・高いところまで行くので、ペラペラな声にした方がやりやすい方はペラペラな声でエクササイズを行ってみましょう。この時、途中で抜けたような音になったり、強い音になったりとまばらな音色にならないように注意してみてください。
・このプログラムではこの場でひっくり返りが改善できるように組んでいるエクササイズと、ここから2ヶ月後・半年後を見据えて組んでいるエクササイズがあります。将来のことも考えてどんどん音域を広げられるように頑張ってみてくださいね！

11. Lip Buble 1 octave and 5th Scale

・ラストのエクササイズです。これも高いところまでいきます。地声を優勢にしていくエクササイズなので、地声のクールダウン・裏声のウォーミングアップという狙いもあります。そして将来的に広い音域をカバーしたトレーニングに臨めるようにという狙いもあります。
・ポイントは指を使うことです。指で唇を下から上に持ち上げた状態で行ってみてください。この時、あまり息を強く吐くのではなく、あくまでも声を出している息の量で行うようにしてみてください。息の量が多くなっている状態ではあまりトレーニングとしても効果が生まれません。わかりづらい方はLip BubleではなくAAで歌っている時と同じ息の量だと思っていただけるとわかりやすいかもしれません。どうしても唇が羽音みたいになってしまう方は声を大きく出すというように意識していただいても良いかと思います。

いかがでしたでしょうか？
ケロンとひっくり返ってしまい過度にリラックスしてしまっている状態に対して、ここでは抜けないように、ひっくり返らないようにというトレーニングメニューになっているのでそれなりにきつかったかもしれません。
ひっくり返ってしまうということは使うべき力が使えていない可能性があり、そういうタイプの方はそれなりに筋力的な負荷は感じるかもしれません。
このトレーニングメニューに慣れて、ひっくり返りもだいぶ収まってきたかなと感じられた方は高音開発メニューの方に入っていただければと思います。そこで良いリラクゼーションのバランスを見つけることができるかと思います。

また、エクササイズの分数で言うと男性の方が長くなっています。
これは男性の地声音域：裏声音域＝2：1に対して女性の地声音域：裏声音域＝1：2となります。女性の方が裏声音域が非常に広いです。
このフリップ対策のメニューでは裏声はそこまで重要ではなく地声音域の方が重要となってきます。なので女性の全音域はタッチしておりません。男性は地声音域の方が広いため結果的にエクササイズの長さに差が出ております。

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